2010年04月13日

ゴールの仕方

ゴールの仕方
チャレンジウォーク(兵庫県徒歩縦断プログラム)が無事終わりました。
あんな過酷なコースだったにも関わらず
子どもたち34名全員がゴール。

今年もいろんなドラマがあったけど、
今日はひとつだけ紹介させてください。

史上最長の距離170kmの道のりは過酷でした。
特に今年は、連日の山道に大雨、大雪…
34名のチャレンジャーはもちろん、
引率している私やえのちゃん、そしてリーダー達の体力も容赦なく奪っていきました。

中でも忘れられない一人の青少年活動リーダー
3日目から足を引きずり始めたひとりの男性リーダーD君。

彼は3日目の夜、テーピングを巻いてもらいに私のところにやって来ました。
「もし、子どもの足を引っ張るようなことがあればリタイヤします」
彼は痛みにゆがんだ顔で私にこう宣言して眠りにつきました。

4日目の夜
足の痛みだけでなく、発熱…。
翌朝にもし熱が下がっていなかったら、私がストップさせる旨を伝えました。
D君しぶしぶ了承。
翌朝、奇跡?精神力?熱は下がっていました。

5日目
痛みはひどくなっているようです。
鎮痛剤を飲みながら歩く彼に、私は
「子どもから遅れてもいいから自分のペースでゆっくりおいで」
と進言しました。しかし、彼は
「子どもと離れて歩いてゴールしても何の意味もないんです。
お願いです。本当に無理な時は自分から言いますから
子どもたちと一緒に歩かせてください」
と泣きながら私に訴えてきました。
その後も交通整理用の黄色い旗を振りながら、足を引きずり歩き走るD君
時折見せる笑顔はつくり笑顔と誰が見てもわかる程
彼は痛みに耐えていました。

6日目
既に子どもたちもD君の不調に気づいています。
いつの間にかD君や他のリーダーたちに対して
誰も甘えや不満を言わなくなってきています。
「リーダー達だって精一杯やっているんだ」
そんな声が聞こえてくるようでした。
無言で歩き続ける時間と、はしゃぎ声が飛び交う休憩時間。
朝の7時スタートしてから13時間後、
彼は涙と鼻水と嗚咽ともに宿泊場所に到着しました。
しかし数分後には、子どもたちに寄り添い
一緒にご飯を食べ、一緒に寝る用意をし、一緒に地図を見ています。
私が「D君は先に早く寝るように」と言っても
「リーダーとして縦断達成するからこそ意味があるんです」の一点張り。
彼は、兵庫県縦断というゴールにこだわったのではなく
ゴールの仕方にこだわっていました。

7日目
午後1時すこし前、日本海はそんな彼と
彼と一緒に歩いた仲間たちを迎えてくれました。
感動のゴールです。
ゴールの仕方
彼も私も涙が止まりませんでした。
彼の目に映った日本海はどんな風に見えたのでしょうか。

その夜の加古川での解散式を
この7日間何事もなかったような笑顔で過ごすD君。
彼は解散式終了後のリーダーの打ち上げに参加しませんでした。
「私がなぜ打ち上げに来られないの?」
と尋ねたらD君はこう答えてくれました。

「今日は、僕の母の誕生日なんです。
父が単身赴任中なので、
僕が帰ってお祝いしないと、きっと母は寂しいと思うんです。
僕がこういったリーダー活動をすることを
母はすごく理解して応援してくれています。
だから、ゴールできた今日は
母と一緒にどうしてもお祝いしたいんです。
勝手言って本当にスイマセン」


彼がこだわったゴールの仕方には
どこまで深いものがあるのだろう。

足を引きずりながら、一人で駅に向かう彼の後ろ姿を見ながら、私は
彼にはゴールなんてないんだろうな
彼にとっては、今日見た日本海も通過点なんだろうな
そんなことを考えていました。

Posted by やまさん at 19:45│Comments(2)
この記事へのコメント
素敵な方ですね。
心から尊敬します。
Posted by ごぉ at 2010年04月15日 23:55
涙がとまりませんでした・・・。

家事に育児に励んではいるものの「私頑張ってないなぁ。楽してるよなぁ。」と思って反省してしましました。

年々リヤカー隊増えていますね。
素晴らしいです活動です。
我が子にもいつか体験してほしいと思っております。

日々「こどものやる気を育てるには?」を自問自答。
今4歳の息子。
仲間を想って我慢できる協力できる力を身につけてほしいなぁなんてぼんやり考えます。

これからも頑張ってください!
Posted by あらし at 2010年05月30日 23:23
 
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