２泊３日のキャンプに指導者として行って来ました。

小学生高学年対象のキャンプなのですが、
キャンプスタート直後に
叫んでいる男の子がいます。

「帰る〜　帰るんや〜」

涙も流しています。
どうやらホームシックのようです。
私たち指導者の話を聞く間もなく、
彼は自分の体と同じくらいの大きさもあるかばんを持って
歩きはじめました。

駐車場に向かっているのかなと思いきや
彼はキャンプ施設の玄関を出て
車のびゅんびゅん通る道路の脇の歩道を歩いていったのです。

私は彼の後ろを黙ってついていくことにしました。

黙ったまま１０分ほど歩いて
彼が最初に言った言葉は
「なんでキャンプに行きたくないか教えたろか？」

私が「なんでなん？」と尋ねたら




彼は「わからへん」


ほな言うなよと突っ込みたいところですが
表情から察するに
どうやら、黙ってついてくる私に
何か聞いて欲しいことがあるようなのでした。


家のこと、この前にキャンプに行ったときのこと
お母さんのこと、お父さんのことを話ながら約３０分。


ふと彼は立ち止まりました。
話す事がなくなったのかなと思っていたら、
こんな言葉が


「家までの道　わからへん」


そりゃあそうです。
彼の家は、そこから車で１時間以上かかる場所
小学生の彼が詳しい道を知っている筈もありません。


おおよその方向を決めて歩き始めましたが
やはり暫くして



「夜には着くよなあ？」



私が、「着くかなあ･･･」
などととぼけていると、彼は立ち止まって考えはじめました。
すごく真剣に考えています。
沈黙の15分でした。




「キャンプ場に戻って
　　夜までだけキャンプがんばってみようかな
　　　夜になったらお母さんに電話して迎えに来てもらおうかな」



それが彼のひねり出した答えでした。
反対する理由もありませんので、そのまま二人でキャンプに戻りました。


夕食の時でした。


彼は再び涙で瞳をぬらしていました。
ハンバーグを少しずつ、
ほんとに少しずつ、
このままそんな少しずつ食べてたらいつ終わるのかというぐらい
少しずつ食べながら、
何も言わずに涙をポロリポロリとこぼしていました。

隣に座った私にも見向きもせず、話もせず
ただハンバーグを見つめながら。


夕食の定食でおかずがたくさんある中
ハンバーグだけを食べきってしまった瞬間。
動きを止めて、彼は一言つぶやくように




「僕、もう少しだけ頑張ってみようかな」




彼はまさに戦っていたんですね。成長の瞬間です。
良かった。もう少しで「お母さんに電話しようか？」
と言ってしまうところでした。

彼の頑張ろうとする気持ちを無駄にしてしまうところでした。


彼は宣言した後、
せきをきったように
ハンバーグ以外のおかずもがっつきはじめました。
もちろん泣きながら。

結局、彼は2泊3日のキャンプを
他の子ども達と見分けがつかないぐらいに満喫されていました。
でも、解散の時だけは少し照れくさそう。



彼のお母さんが私に近づいて来て
キャンプがスタートした時、実はかげから見ていたらしく
「大丈夫だったでしょうか？」
と尋ねて来られました。

私が彼との出来事を話すると、
お母さんもうっすら涙を浮かべて喜んでいらっしゃいました。
「息子は成長させてもらったようですね」



成長したのは彼自身ですが、
私もやっぱりこの仕事してて良かったなと思った瞬間でした。
子ども達が成長しようとする瞬間
いつでも待てる大人になりたいもんです。



偶然にも、うちの相方と８人の大人が率いる子ども20名が
本日、冒険の旅に出発しました。
私が所属する事務所主催のチャレンジウォークという行事です。
詳細はコチラで見ていただくとして


大人はどこまで答えを出さずに待てるのか･･･
子どもにとっての冒険は、大人にとっても冒険のようです。